LOGO MENU
LOGO LOGO
LOGO

東海道53次 22.岡部-宇都ノ山ノ図
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:遠藤光局 / 摺師:栃木義郎
浮世繪之美 - vol.3122

本作品は、前掲「戸塚」、「蒲原」と共通する構図に基づいています。手前両側の崖の切り込みがかなり強調されているので、より遠近感が明確です。山駕籠が進む先に半身だけの2人の旅人が見えています。これは、坂道を上ってくる人を表現するもので、反対に手前の杖を持つ旅人は坂を下る様子であることが分かります。とすると、右手の敷地にある茅葺き屋根の茶屋は、いわゆる頂上部にあった峠の茶屋(上立場茶屋)を描くものであると理解できます。副題「宇津ノ山の圖」とある、宇津ノ谷峠のことです。その峠を越えると、岡部の宿場に至ります。前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「岡部」を参照すると、手前が鞠子側で、奥の方が岡部側であると想定されます。同図鑑には、鞠子側に「立バ宇都ノ山」「十(とお)だんご」と記されており、団子を数珠の形にした十だんごがこの辺りの名物であると知ることができます。食用というよりは、峠の地蔵に祀るなどし、道中安全のお守りとして使用したようです。たぶん、画中の峠の茶屋でも売っているはずです。保永堂版は、峠を下る途中の様子を岡部側から描いています。

宇津ノ谷峠の旧道は、「蔦の細道」とも呼ばれた難路で(前掲図鑑参照)、その様子を詠った歌も少なくありません。たとえば、『伊勢物語』では、在原業平が「駿河なる宇津の山辺のうつつにも 夢にも人に逢はぬなりけり」と詠んでいます。比べると、狂歌はこの和歌を本歌としていると分かります。狂歌の意味は、「こしをうつヽの」で疲れて腰を打つと夢現(ゆめうつつ)の2つの意味を掛け、そんな「うつの山」を越えて岡部の宿に泊まれば、疲れ果てて夢を見ることもないと結んでいるのです。宇津ノ谷の峠越えの大変さを詠い込んでいるという訳です。

ちなみに、雨の宇津の山路で滑って転んだ弥次さんは、「降りしきる雨やあられの十だんご ころげて腰をうつの山みち」と詠んでいます(『東海道中膝栗毛 二編下』岩波文庫p184)。滑稽本に挿入された狂歌なので、弥次さんの方が面白さでは上かもしれません。しかし、狂歌入り版のそれは、情緒において優れた感があり、狂歌師に紀行文学的意図があるのかもしれません。

草臥(くたびれ)て こしをうつヽの うつの山
岡部のやどに 夢もむすばず
森冨亭満葉

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

← Back ∣ vol.3122 Next →
浮世繪之美

LOGO
logo
104台北市中山北路一段33巷6號 ∣ Tel:2521-6917
Mobil:0935-991315 ∣
營業時間:中午12點~晚上七點