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東海道53次 5.保土ヶ谷
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:板倉秀継
浮世繪之美 - vol.3105

新町橋を渡る旅人を描く保永堂版とは随分と趣が異なっています。峠の茶屋風景と見られますが、広重も右側の大木の横に「境木(さかいぎ)立場」と注意書きを入れているので、通例とは違う場所を描いているという自覚はあるのかもしれません。宿場を過ぎて、西方の権太坂という坂の上にあった立場で、鎌倉山が遠望できる場所でした。なぜ広重が新町橋ではなく、権太坂を上った先の境木を描いたかは当然考えなければならない問題です。

狂歌は、「まはるもはやき双六や」という諺を発句として、いそぐ程にすぐに「程がやのえき」に到着したと詠み解いています。程(保土)を掛けた言葉遊びです。しかし、これではこの狂歌の遊びはあまりに小さ過ぎます。そこで、前掲『五種競演』(p36)の解説は、仮名の「ほ」はいろはの5番目、また保土ケ谷も東海道5番目の宿場と「いろは双六」に掛けて読み解いています。確かに前宿〈4〉「加奈川」では「いろは双六」が題材になっていましたが、当宿〈5〉「保土ケ谷」は「まわり双六」とあるに止まります。それに「保土ケ谷」は東海道4番目の宿場ですので、いずれにしろ、解説は当てはまりません。廣重狂画『伊勢参宮膝くりげ道中壽語録』参照(『古地図・道中図で辿る東海道中膝栗毛の旅』人文社・2006)。

まわり双六の楽しさは、一番早く上がることです。つまり、早いことが最重要なのですが、それを受けて、狂歌は、単純に、急ぐ程にもう程がや(保土ケ谷)に着いてしまったと歌っているだけです。これに境木の立場を描く広重の絵を合わせると、武蔵と相模の「国境」である境木の立場に着いてしまったというトピックスを遊んでいることに気付きます。狂歌と広重の絵を重ね合わせることで、遊びの幅が広がるという仕掛けです。広重が敢えて画中に「境木立場」と書いた所以です。前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』の「程ケ谷の地蔵堂」が実際の境界です。

諺の まハるもはやき 双六や
いそげばいそぐ 程かやのえき
遊鶴亭千代子

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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