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東海道53次 3.川崎
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:小州文彥
浮世繪之美 - vol.3103

川崎と言えば、六郷(多摩川)船渡し風景が定番で、保永堂版でも品川(八幡塚村)側から富士山の遠望と合わせて描かれています。狂歌入り作品は、すでに川を渡り終えた川崎側から渡船場と船渡しを見返す視点です。また、六郷川に浮かぶ帆船(高瀬舟)もしばしば描かれる風物です。此岸の街道に2人の女が立ち話をしているようです。この女2人旅姿は六郷ではほとんど川崎大師参りの記号となっており、保永堂版でも船中に女2人旅の姿が見えます。左隅には、船場会所があり、旅人と渡し賃のやりとりをしている様子です。他には、従者を連れた武士と町人が左側川崎方向に歩んでいます。作品が川崎側に視点を置き、近景に旅人がその先に進んでいるのを描いているところに、視線の流れを利用した広重の創意を感じます。

さて、その創意とは何かということですが、狂歌を重ね合わせると読み解けます。狂歌には、「めをとばし」と「つるみ」という言葉が使われています。『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』(天保13・1842年)を参照すると、川崎宿はこの後、市場の「めうとばし」、鶴見の「つるみばし」と続きます。狂歌に詠まれた地名を暗示させる描法を広重が採ったということが分かります。なお、狂歌は「春霞」で始まりますが、ここから想像できることは、狂歌入り作品の背景の灰色の横筋と青色のぼかし部分は、春霞を表現する趣旨であるということです。嶋田・前掲『広重のカメラ眼』(p31)は、高曇りの空、雨対策の油紙の話題に触れますが、狂歌への意識がないように思われます。

川崎宿と神奈川宿の境に架かる2本の石橋・夫婦橋を渡ると、鶴見に至り、夫婦がつるみ(和合して)、春霞の中、夫婦の心が溶け合う(心の溶けし)というのが、狂歌の意味となります。六郷船渡し場は東海道と川崎大師に至る大師河原道との分岐点に当たり、その川崎大師が女の厄落としで有名であることを考えると、夫婦の和合(女の幸せ)を歌った狂歌もその状況に合わせた題材選択であるということです。さらに、狂歌の作者は女性かもしれません。

春霞 ともに立出て めをとはし(夫婦橋)
わたりつるみの(渡り鶴見) 心のどけし
春園静枝

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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