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東海道53次 43.桑名-宮田立場之図
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:小川文彥
浮世繪之美 - vol.3143

神風の、美(うま)しの、伊勢国に入ります。狂歌入り版には、「富田立場之圖」という副題が付いています。前掲『東海木曾兩道中懐寶圖鑑』「桑名」によれば、宿場の南西方向の、「町屋川」、「砂川」、「ほし川」、「朝明川」などいくつかの川を渡った先に、「西冨田」、「立ハ東とみた」があり、「焼蛤ならつけ香物もちふく」などが名産物として紹介されています。木曽川・長良川・揖斐川の河口デルタに発展した桑名湊より、四日市に近い場所と言えます。旅人や駕籠舁き達が「名物焼はまぐり」と書いた看板の掛かる茶屋街で休憩する様子です。前掲『東海道中膝栗毛 五編上』(岩波文庫p16)にも、「爰はことに燒はまぐりのめいぶつ、兩側に茶屋軒をならべ、往來を呼びたる聲にひかれて、茶屋に立寄」と記されています。旅籠や茶屋を描く際にはスポンサーの宣伝があることが多いのですが、本作品でも、「京橋仙女香」の看板が掛けられています。保永堂版に見られるように、通例は桑名湊のランドマーク桑名城と帆を張った廻船を描くのですが、狂歌入り版は例外的表現です。その実景的描写を楽しむとするならば、左端で蛤を焼く女の太鼓帯が京舞妓風で、店先を歩く男や向かい側の男達が見ているのが焼蛤なのか、それともその女なのか曖昧なところが面白いと言えましょう

狂歌に話を進めると、「乗り合の」とあって、宮から桑名の海上七里の乗合船での状況であることが分かります。広重が、本作品で海上の渡船や湊の桑名城を描いていない理由もこれで理解できます。やはり、狂歌と浮世絵の棲み分けがあって、しかも、狂歌の方が優先されているように感じられます。「ちいが雀の はなしには」とは、チイチイ鳴く雀の話という意味の他に、これを「知音(ちいん)」、すなわち親友の、「雀のはなし」、すなわちお喋りと例えていると考えられます。乗合船でまるで雀が鳴くような同行の友のお喋りに、桑名の焼蛤も舌を巻く程であると詠ったものです。伊勢、熱田を参詣する客達が船中で打解け、和気靄々と話に花を咲かせる様子が目に浮かびます。また、中国の諺「雀入大水為蛤」を下敷きにしているとすれば、雀と蛤とが対になっており、また、諺の季節は晩秋なので桑名名物「時雨(しぐれ)蛤」の季節感と一致することも確認できます。時雨は晩秋降る雨だからです。さらに、ここで「舌切り雀」の噺を思い起こすと、ぱっくり貝(口)を開いた焼蛤が「舌をかくせり」というのも頷けます。

乗り合の ちいが雀の はなしには
やき蛤も 舌をかくせり
楳の門鬼丸

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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