LOGO MENU
LOGO LOGO
LOGO

東海道53次 37.赤坂
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:堀田治 / 摺師:品川勝夫
浮世繪之美 - vol.3137

赤坂宿東側の見附の情景です。御油と赤坂との16町(1.7km)の短い街道には美しい松並木が続き、画中の松はそれを彷彿とさせるものです。とは言え、目立つのは下枝打ちした杉の木立で、街道を左右に挟んで、門の役割を果たしているようです。明月に照らされる静かな宿場風景ですが、保永堂版の「御油」「赤阪」を見れば分かるとおり、激しく客引きをする「旅人留女」と化粧する「旅舎招婦ノ圖」が両宿場の実態です。つまり、この絵は、夕方から夜にかけての狂騒が収まり、寝静まった旅籠風景なのです。風景を真写することを本旨とする広重としては、狂歌入り版の表現の方が自然なのかもしれません。実景を離れた構想部分は狂歌に任せれば良いという点が、狂歌入り版の優れているところです。

狂歌に「双六」が登場するのは久しぶりです(保土ヶ谷」「戸塚」等参照)。宿場「赤坂」と掛けて、日本橋を振り出した「髭奴」・別名「赤坂奴」と解いたのですが、狂歌の前提には大名双六があって、その一行に奴がいるので、「ともにふり出す」という句が使用されています。髭奴というのは、武家奴が男伊達として、奴頭(やっこあたま)、立髪、鬼髭などの風姿をしていたことに由来します。武家奉公人の中間(ちゅうげん) の俗称で、武士が出かける時の荷物持ちなどの雑務をこなし、参勤交代の時には大勢の奴が必要です。とくに「赤坂奴」と呼ばれるのは、赤坂八幡の祭礼を手助けし、江戸の呼び物、名物となったからと言われています。また、山の手の大名に雇われ、山の手奴とも呼ばれます。前掲『五種競演』(p228)は、「ふり出す」を賽子(さいころ)を振ると舞踊「奴振り」が掛けられていると読み解いています。さらに深読みするならば、奴振りをしているのは髭奴というよりは、赤坂の遊女(飯盛女)、つまり赤坂奴なのではないでしょうか。こちらの理解の方が、艶っぽい赤坂宿の風俗とも一致し、狂歌に情緒が生まれるのは確かです。

前掲『東海道中膝栗毛 四編上』(岩波文庫p279)では、御油・赤坂間で弥次さんが喜多さんを狐と思い、後ろ手に縛り上げる事件が起こります。本作品の静謐な満月は、そこに明確な意図があるならば、狐が人を騙すかもしれない不思議な夜の予兆なのかもしれません。

双六と ともにふり出す 髭奴
名を赤坂の 宿にとゞめて
鳴門静丸

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

← Back ∣ vol.3137 Next →
浮世繪之美

LOGO
logo
104台北市中山北路一段33巷6號 ∣ Tel:2521-6917
Mobil:0935-991315 ∣
營業時間:中午12點~晚上七點