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東海道53次 31.舞坂-今切舟渡
佐野喜版(1840)
「狂歌東海道」-横大判56枚揃物
彫師:松田寅藏 / 摺師:板倉秀継
浮世繪之美 - vol.3131

狂歌入り版には副題「今切舟渡」とあり、帆を張った船が浜名湖の今切を通過し舞坂の船着場に到着する様子を描いています。船中の旅人が武士一行ならば、石垣と石畳を敷き詰めた北雁木(きたがんげ)、一般庶民だと南雁木(みなみがんげ)が船着場になります。帆掛け船の背後の松原の岬のような部分は、弁天島の一部であり、さらに、その背後の山は浜名湖北岸にあった丘陵を写すものと考えられます。保永堂版には副題「今切真景」とあるのに、そこに描かれる黒い山は実際には存在しないと言われることがしばしばですが、実景描写を基本とする狂歌入り版にも写されているところからすると、舞坂からは少し離れた北部の丘陵や岩山を背景描写に利用しているのだと推測されます。

 『東海道名所圖會 巻の三』(前掲『新訂東海道名所図会中』p168)に、「今切 後土御門院御宇、明応八年六月十日(1499)。大地震して、湖と潮(しおうみ)とのあいだ切れて、海とひとつになりて入海となる。これを今切という」と記されています。さらに要約すれば、永正7年(1510)、元禄年中(1688~1704)にも、山崩れ、地震津波があって、遠州灘の波が直接浜名湖に入って海が荒れ、渡船の災いとなることから、宝永年中(1704~1711)に、今切の波頭に数万の杭が打たれ、舞坂から海中に波除けの堤が築かれ、風波を穏やかにして安全な船渡しができるようになったとあります。保永堂版の画中近景に描かれる杭が、まさにその波除けの杭です。狂歌入り版では、2艘の船の屋根に道中笠が置かれており、舞坂・荒井間のとてものどかな船渡し風景と分かります。

狂歌には、「揚雲雀(あげひばり)」と「落る雲雀」とあって、春の穏やかな風情を語りつつ、上昇する雲雀と下降する雲雀とで縦の動きを見せています。しかし、その後の句で「今切」の地名を利用して、舞坂を横切る船渡しの様子を示し、横の動きを対比的に用いています。縦と横の視覚的動きを交錯させ、かつ想像させる狂歌です。前回「濱松」は音を想起させたのに対し、今回は雲雀の声の他に視覚的往復運動を想像させ、言葉遊びを超えた映像の技を感じさせる狂歌となっています。舞坂に春の雲雀が飛ぶ様を広重の絵に重ねると、深みのある新たな趣が作品から浮かび上がってきます。

揚雲雀 落る雲雀の 舞坂を
横に今切る 舟渡しかな
桃實園雛壽㐂

歌川廣重(Utagawa Hiroshige,1797-1858)
《東海道五十三次》爲浮世繪大師歌川廣重成名作
描繪由江戶至京都的53個宿場
包含起點的江戶日本橋和終點京都内裏共56景

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浮世繪之美

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